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「今月のブログ」では、プロテインスコアの使い方を間違えている事例を見ながらその意味をご説明します。

「今月の論文」では、パースルフィド修飾部位の特定と定量に関する研究論文を取り上げました。

「今月の小技」では、最近のMicrosoft Officeのセキュリティアップデートの実施により発生したAccessの不具合とその対処方法についてご説明します。

Mascotニューズレターの バックナンバーはこのページ からご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

今月のトピックス

プロテインスコアの誤解
HSS修飾部位の特定と定量
Accessの不具合
 

プロテインスコアの誤解

Mascotは様々な研究分野のお客様にご利用頂いており、研究論文の中で引用されることも多いのですが、プロテインスコアの解釈や使い方に関して誤解していると思われる記述を時々見かけますので、改めてご説明します。

Mascotは与えられた質量ピークにマッチするタンパク質やペプチドを検索し、そのマッチングの確率をスコアとして表示します。PMF検索では、MSスペクトルを構成するペプチドイオン質量ピークにマッチするタンパク質を検索しますので、プロテインスコアと名付けています。プロテインスコアが高いほどそのタンパク質が実験サンプル中に存在する可能性が高くなります。

一方、MIS検索では、プリカーサイオンとそれに由来するMS/MSスペクトルを構成するプロダクトイオンの質量ピークの両方にマッチするペプチドを検索しますので、イオンスコア(ペプチドスコア)と名付けています。イオンスコアが高いほどそのペプチドが実験サンプル中に存在する可能性が高くなります。なお、マッチしたペプチドが帰属するタンパク質を整理する過程で、タンパク質に帰属するペプチドのイオンスコアを積算してプロテインスコアを計算していますが、PMF検索におけるプロテインスコアのような統計的な意味合いはなく、検索結果ページに表示されるタンパク質は単にイオンスコアの総和としてのプロテインスコアが大きい順に並んでいるに過ぎません。

時々「all proteins identified with a Mascot score higher than 60 were considered reliable」や「peptides and proteins with a Mascot score higher than 35 and 50, respectively, were automatically accepted.」のような記述を見かけますが、プロテインスコアが60のタンパク質に帰属するペプチドは、イオンスコアが60のペプチドが1個だけの場合もありますし、閾値スコアが13でイオンスコアが14のペプチドが47個の場合もあります(注1)ので、偽陽性率(FDR)や「one-hit-wonders(有意なイオンスコアを持つひとつのペプチドを使ってタンパク質を同定するのには無理がある)」を考えると議論の余地が残ります。

たとえば「identified proteins exhibited at least one peptide with an individual Mascot score of p<0.05」 や 「proteins were accepted if they had at least one 'rank 1' peptide with a peptide ions score of more than 50.0.」で表現される方法で偽陽性タンパク質を除外するのは難しいのですが・・・詳しくは ブログ をご覧ください。

  • (注) MudPITプロテインスコア
  • 定義:域値スコア平均値+Σ(イオンスコア−域値スコア)
  • 計算例:域値スコア13/イオンスコア14のペプチドが47個の場合
  • 13*47/47+(14-13)*47=60
Another myth

パースルフィド(-SSH)修飾部位の特定と定量

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

Site-Specific Quantification of Persulfidome by Combining an Isotope-Coded Affinity Tag with Strong Cation-Exchange-Based Fractionation

Qiong Wu, Baofeng Zhao, Yejing Weng, Yichu Shan, Xiao Li, Yechen Hu, Zhen Liang, Huiming Yuan, Lihua Zhang, Yukui Zhang

Analytical Chemistry 91 14860-14864 (2019)

この研究論文では、パースルフィド修飾部位の同定ならびに定量のための新しい手法について説明しています。すなわち、c-ICAT試薬でパースルフィドを標識して酵素消化を行い、ストレプトアジビンビーズを使って標識されたパースルフィドペプチドを濃縮し、強カチオン交換クロマトグラフィーで分画した後にLC-MS/MSシステムで検出・同定を行います。ちなみに、標識に対応する修飾は「ICAT-」のHとLおよび「ICAT-S-」のHとLを使って検索し、-SHと-SSHを識別しています。

HeLa細胞消化物にパースルフィド部位既知のBSA消化物(質量比1/100と1/1000)を加えたサンプルを使って7割以上のパースルフィド部位を同定できることを確認した後、A549細胞のEMTプロセスにおけるパースルフィド部位の特定と定量解析に適用した結果、160個のタンパク質から266個の内因性パースルフィド部位を特定し、そのうち168個(74%)が新たに発見されたものであり、また1個のパースルフィド修飾を持つタンパク質は71.2%、同2個は21.3%、同3個は5.0%、同4個以上は2.5%だったと報告しています。

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Accessの不具合と対処方法

Mascot Daemonは検索に関わる全ての情報をタスクデータベースで管理しています。標準データベースエンジンは、v2.4まではMicrosoftのAccessを、v2.5以降はVistaDBを使用していますが、引き続きAccessを利用するお客様は、2019年11月のOffice 2010、2013、2016のセキュリティアップデートの実施によって問題が起こる場合がありますので、その内容や回避方法に関する Microsoftサポートの書類 をご覧ください。なお、現在使用してるデータベースエンジンは[Edit]→[ODBC Information …]で表示されるダイアログで確認することができます。

Mascot Daemonは様々なデーベースエンジンを利用することができますので、この機会にAccessを使うのはやめて、VistaDBに切り替えると色々な意味でスッキリできるかもしれません。インストール方法等は[Help]→[Getting Started]→[Database Engines]→[VistaDB]をご覧ください。また、今まで使っていたAccess形式タスクデータベースファイルのVistaDBへのインポートについては 日本語資料 がありますのでご参考にしてください。

タスクデータベースを複数のMascot Daemonで共有したい場合はPostgreSQL、SQL Server、MySQL等のデータベースエンジンを利用することができます。[Help]→[Getting Started]→[Database Engines]の対応するデータベースエンジンのページをご覧ください。

今回の問題を報告し原因を特定した U. Nebraska-LincolnのMike Naldrett に御礼申し上げます。

Mascot tip

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