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2019年2月号

 「今月のブログ」では、SL検索はプロテオミクス分野においてもすでに実践的に利用できる環境にありますので改めてご説明したいと思います。

 「今月の論文」では、オルガネラのタンパク質局在を解析するための新しいアプローチである「LOPIT-DCプロトコル」に関する研究論文を取り上げました。

 「今月の小技」では、消化酵素の編集方法についてご説明します。

 Mascotニューズレターの バックナンバーはこのページ からご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

今月のトピックス

今月のブログ:SL検索
今月の論文:LOPIT-DC
今月の小技:消化酵素編集
 

今日から使えるSL検索

 プロテオミクス分野におけるSL検索の利用状況について議論した研究レポートが昨年10月に発表されましたが、その中でSL検索の普及を妨げていると思われる要因をいくつか考察しています。

 Mascot Server 2.6ではSLと配列DBに対して同時に検索を実行し、それらの検索結果を一元的にまとめて表示することができますし、検索結果からSLを作成することもできますので、研究レポートが提起している「妨げ要因」は大きな問題ではありませんのでご説明したいと思います。

  • 既存のワークフローにSL検索を統合するのは難しい件
    Mascot Server 2.6のSL検索は配列DB検索同様に、検索条件設定フォームから検索結果の表示および出力までシームレスに統合されています。お客様はデータベースリストから検索したいSLを選択して検索ボタンを押すだけです。また、検索結果の内容を抽出するためのプログラムライブラリであるMascot ParseもSL検索に完全対応していますので、お客様の独自プログラム作成を強力にサポートします。

  • SLファイルフォーマットは改良途中である件
    Mascot Server 2.6はNISTのMSPepSearchを実装しており、MSPフォーマットをサポートしています。MSPフォーマットでは、各々のエントリーは独立しており、ピークリストとプリカーサおよびアミノ酸配列に関する情報を最低限含める必要がありますが、その他の情報追加に対して柔軟性がありますので、現状のニーズに十分対応することができます。

  • 公共ライブラリが存在しない件
    研究レポートでは「全部入り」の公共SL構想を提案しています。提出データの受け入れやキュレーションを自動化し、データの履歴を正確にトレースすることができ、ペプチドの開裂パターンの全てを含むシステムを想定していますので、日々の研究で利用するライブラリ(図書館的)というよりはリボジトリ(貯蔵庫的)に近いイメージかもしれません。とはいえ、現状でもいくつかのサイトから多数のSLをダウンロードすることができますし、もし特別な生物種由来のサンプル解析や定量タグの利用などにより目的に合うSLが存在しない場合でも、Mascot Server 2.6には過去の検索結果からお客様の目的合ったSLを構築する機能が実装されています。
  •  詳しい内容は ブログ にまとめましたのでご覧ください。

Library

今月の論文:LOPIT-DC

 Mascotを利用したタンパク質の同定・定量・キャラクタリゼーションに関する最近の研究論文の中で、特に興味深いテーマを取り上げて紹介しています。Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください

 

Combining LOPIT with differential ultracentrifugation for high-resolution spatial proteomics

Aikaterini Geladaki, Nina Kocevar Britovsek, Lisa M. Breckels, Tom S. Smith, Owen L. Vennard, Claire M. Mulvey, Oliver M. Crook, Laurent Gatto & Kathryn S. Lilley

Nature Communications, volume 10, Article number: 331 (2019)

 この研究論文では、操作が煩雑で時間を要する「密度勾配法hyperLOPITプロトコル」に対して、より簡便性が高い「LOPIT-DC(分画超遠心法を組み合わせたLOPIT)プロトコル」を新たに開発して両者を比較したところ、非常によく似たオルガネラ局在タンパク質の高解像度マップが得られ、アイソフォームを含めたタンパク質の局在解析やシグナル伝達経路の同定を容易にすると報告しています。

 実験サンプルはヒト骨肉腫U-2 OS細胞株を用い、主成分分析を利用して作成したタンパク質のオルガネラ局在マップを比較しています。 hyperLOPITは包括的で高分解能な情報を提供する点で優位性がありますが、LOPIT-DCはhyperLOPITに比べてサンプル量や実験時間などがより少なくて済みますので、全体的な見通しを良くしたい場合や、実験リソースや予算の制約がある場合に実用的な選択肢となります。

Thumbnail from featured publication

今月の小技:消化酵素の編集

 Mascot Serverの消化酵素の定義は「Configuration Editor」を使って簡単に追加・編集することができます。Mascotのトップページ(Welcomeページ)を開き、[Configuration Editor]リンク → [Enzymes]リンクの順にクリックしてください。「Mascot Configuration: Enzymes」ページが開きます。

 主要な消化酵素はすでに登録されていますので新規に追加登録するする必要性はないと思いますが、たとえば複数の酵素を利用した実験の場合は新たに「Enzyme mixture」を追加登録する必要があるかもしれません。例として、最初にCNBr(MetのC末端側で切断)で処理し、その後にAsp-N(AspのN末端側で切断)で処理するような実験条件では次の手順で作成した「CNBr+Asp-N」消化酵素を使うとうまく機能すると思います。

[Add new enzyme]ボタンをクリック → [Title]入力欄に「CNBr+Asp-N」を入力 → [Components]ブロックの#1行で[Sense]の「C-term」を選択し、[Cleave at]で「M」を入力 → [Add] ボタンを押して#2行を作成し、「N-term」を選択し、(DB配列中にBがある場合はDとNに対応するので安全を見て)「BD」を入力

 ここでタンパク質消化の運命を分ける設定値が2つあります。「Independent」と「Semispecific」です。

 [Independent]をチェックしない場合はCNBrとAsp-Nの切断特性が同時に適用されます。すなわち、MetのC末端とAspおよびAsnのN末端で切断されたペプチドが生成します。[Independant]をチェックした場合はCNBrとAsp-Nの切断特性が独立に適用されます。すなわち、MetのC末端で切断されて生成したペプチド#1と、AspおよびAsnのN末端で切断されて生成したペプチド#2を混合したイメージになります。[Test]ブロックで[Test Enzyme]ボタンを押すと切断状況をシミュレートできますのでお試しください(適当なアミノ酸配列を入力して試すこともできます)。

 [Semispecific]をチェックすると、生成したペプチドに対してそのペプチドのC末端またはN末端を残すようにして任意に切断します(任意の位置で1回ハサミを入れて2つに分けるイメージになります)。作成した「CNBr+Asp-N」に対してデフォルトの配列で[Test Enzyme]ボタンを押してチェックしてみましょう。「[Independent]=チェック無し+[Semispecific]=チェック無し」では9個のペプチドが生成するのに対して、「[Independent]=チェック無し+[Semispecific] =チェック有り」では391個のペプチドが生成します。このように[Semispecific]を有効にするととたんに検索が重くなりますし、スコアの閾値がぐんと上がりますので、むやみに使わずに必要に応じてError Tolerant検索を併用すると効果的だと思います。

日本語の資料 を用意してありますのでご覧ください。

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