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2017年2月号

Mascot DistillerとMascot Serverを組み合わせるとキメラなMS/MSスペクトルから同定されるペプチドが追加され、よりよい結果が得られます。

Mascotを利用した研究論文を紹介しています。取り上げてほしい話題や研究論文かありましたらぜひご紹介ください。また、 Mascot ニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

今月の小技は、タンパク質のN末端メチオニンの取り扱いについてご説明します。

Mascotニューズレターのバックナンバーは このページ からご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。

保守契約をお持ちのお客様にはMascot Server 2.6.0のバージョンアップキットを3月から順次お届けいたします。今しばらくお待ちください。Mascot Server 2.6でサポートされた新機能につきましては このフライヤー をご覧ください。

 

February 2017

キメラなスペクトル
Mascotを利用した論文の紹介
今月の小技
 

キメラなスペクトルの同定

アミノ酸配列が異なるペプチドAとBが同じような質量と保持時間を持つ場合、それらは同時に断片化され、AとBの両方に由来するプロダクトイオンが混在した質量スペクトル、すなわち「キメラなMS/MSスペクトル(chimeric MS/MS spectrum)」が得られます。 最近の質量分析計であれば、AとBのプリカーサイオンの同位体分布が互いに重なり合っていても、それらのプロダクトイオンを独立に検出することができすし、この質量データをMascot Distillerで処理することにより、AとBの2つのプリカーサイオン質量と、それらに由来するプロダクトイオン質量スペクトルで構成されるピークリスト(キメラなMS/MSデータ)を作成することができます。

MascotはキメラなMS/MSデータに含まれる全てのプリカーサを独立に検索し、ふたつ以上のペプチドが有意にマッチした場合はそれらを独立に表示します。

次の ブログ では、Yeast由来の質量データを処理した例をご紹介しています。Mascot Distillerを使って、ひとつのMS/MSデータに対して最大4つまでのプリカーサを検出するように条件設定してピーク抽出処理を行い、次にMascot検索を実行して、FDR=1%の閾値で検索結果を検討した結果、342,827個のMS/MSデータに対して、207,882個の有意なペプチドが同定されました。「ひとつのMS/MSデータに対してひとつのプリカーサ」の条件でピーク抽出した場合のペプチド同定数は167,806個ですので、約20%増加したことになります。このように、キメラなMS/MSデータの利用は質量データを有効活用するための簡単便利なテクニックであることがわかります。

Mascot Distillerの30日間有効な 試用ライセンス を用意してありますのでお試しください。

Overlapping precursors

Mascotを利用した論文の紹介

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

Architecture of the yeast small subunit processome

Malik Chaker-Margot, Jonas Barandun, Mirjam Hunziker, Sebastian Klinge

Science 13 Jan 2017: Vol. 355, Issue 6321

The small subunit (SSU) processome is a large ribonucleoprotein complex composed of approximately 70 non-ribosomal proteins, several small nucleolar RNA's, and ribosomal RNA precursors (pre-rRNA). It organizes the assembly of the eukaryotic small ribosomal subunit at the early stages by coordinating the folding and modification of pre-rRNA.

The authors used cryo-electron microscopy to elucidate the structure of the S. cerevisiae SSU processome at a resolution of 5.1 Å. They were able to show how the molecular scaffold provided by the 5' external transcribed spacers (ETS) and U3 small nucleoloar RNA is used as a foundation for the assembly of the small eukaryotic ribosomal subunit.

They were also able to show that proteins that bind within the 5' ETS are located at the base of the SSU processome structure, those associated with 18S rRNA domains form the core of the particle, and proteins recruited only after 18S rRNA completion form the outer tier of the structure.

Thumbnail from featured publication

今月の小技

mRNAが翻訳されてタンパク質が合成される際、開始コドンに対応するアミノ酸は通常メチオニン(Met)です。タンパク質データベースは実質的には実験的に決定された塩基配列を機械翻訳することにより作成されていますので、殆どの登録タンパク質のN末端アミノ酸は必然的にMetになります。因みに、SwissProtの2017年1月版では、97.5%にあたる553,474件のタンパク質がMetから始まっています。従いまして、Mascotは通常Metから検索を始めることになります。

成熟タンパク質においては、N末端Metはしばしばメチオニン・アミノペプチターゼによって翻訳後修飾的に除去されていますので、Mascotはこの現象を処理するためのコードをプログラムに埋め込んでいます。すなわち、検索対象となるタンパク質がMetから開始されている場合、検索条件として指定した消化酵素が何であっても、N末端にMetが存在する場合としない場合の2通りを考慮しています。なお、N末端がアセチル、プロピオニル、メチル、メンブレンアンカー(パルミトイル、ミリストイル)などで修飾された成熟タンパク質に対しては検索条件で対応する必要がありますが、考えられる「Variable modification」を指定して力尽くで検索するよりは、同定されたタンパク質に対して Error tolerant検索 を実行する方が効率的だと思います。

検索条件設定画面の[Error tolerant]チェックボックスに「✓」を入れるだけで利用できる Automatic error tolerant検索 では、検索条件として指定した消化酵素をsemi-specific化(切断面を含むようにペプチドを任意に切断)して使いますので、シグナルペプチドが除去された成熟タンパク質にも対応することができます。なお、Automatic error tolerant検索では、semi-specificなペプチドの生成・検索とペプチドに対する修飾の総当たり検索の両方を同時には行いませんので、ヒト・タンパク質の80%が持っている と見積もられている「Acetyl (Protein N-term)」などの出現率が高い修飾はvariable modificationとしてあらかじめ設定しておくと良いと思います。

N-term acetylation

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