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2019年6月号

米国アトランタで開催されたASMSカンファエンスに参加されたお客様におかれましてはたいへんお疲れ様でございました。また「Mascotユーザーミーティング at アトランタ」ならびにASMS展示ブースにご来場いただきましたお客様には改めてお礼申し上げます。来年2020年のASMSは5/31(日)〜6/4(木)、医療・航空宇宙・芸術・文化の大都会ヒューストンで開催されます。

今月は「Mascotユーザーミーティング at アトランタ」におきまして弊社が発表した2つのプレゼンテーションについてご説明します。

「今月の小技」では、定量計算に関わる修飾設定についてご説明します。

Mascotニューズレターの バックナンバーはこのページ からご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

今月のトピックス

微生物メタプロテオミクス
Middle-down検索
定量関連修飾設定
 

プレゼンテーション1:微生物メタプロテオミクス

このプレゼンテーションでは、ヒトの消化器系由来の質量データセットを例として用い、微生物メタプロテオミクスを進めるためのプロセスについてご説明しています。

泥炭湿地、海洋水、消化器系などの環境に生息する微生物叢に関するタンパク質解析(ここでは「微生物メタプロテオミクス」と呼ぶことにします)を進めるに当たっては次のような課題や問題が存在します。

  • 試料中に存在する全ての微生物種を知るのは困難
  • ほとんどの微生物には参照ゲノムが存在しない
  • 多くの微生物種は互いに似ているため検索結果から微生物種を仕分けするのは難しい
  • 微生物種の多さはペプチドの相同性をもたらすと考えられるのでキメラな質量スペクトルがごく普通に測定される

まずは適切な配列データベースの作成が必要ですが、(1) 微生物関連の公共データベースを利用して150万件のエントリで構成される「Human gut」配列データベースを作成し、(2) 微生物関係の研究論文を調べ、Tancaらの研究成果である「matched matagenome」配列にマッチするタンパク質エントリをBLASTを使ってNCBI nrデータベースから抽出した後、MEGAN(メタゲノム注釈ソフトウエア)で仕分けし、2500万件のエントリで構成される「ORF」配列データベースとして再構成し、(3) 検索空間が大きくならないように注意して、質量データに含まれると予想される宿主生物由来とコンタミ由来の9万件のエントリで構成する配列データベースを作成し、使用しました。

キメラな質量スペクトルの検出とピーク抽出はMascot Distiller 2.7を使いました。

テスト検索の結果は、1%FDRの条件で5059件のPSM(Peptide-Spectrum Match)が得られ、1357件のタンパク質が検出されましたが、このうち3割が「Human gut」由来、5割が「ORF」由来でした。

プレゼンテーションに使ったスライドに詳しい説明を記載しましたので ここ をクリックしてご覧ください。

Peat bog

プレゼンテーション2:Middle-Down検索

このプレゼンテーションでは、Middle-downの手法を利用するとProteoform(修飾位置の相違)の同定が容易になるいう研究報告を検証した際の具体的な操作内容と結果についてご説明しています。

Lys-C(KのC末端側切断、P存在未切断)やAsp-N(DのN末端側切断)のような消化酵素は、Trypsin(KとRのC末端側切断、P存在未切断)に比べて、より大きなペプチドの生成割合が高くなるように作用しますので、ピークリストの作成に注意し、適切な配列データベースを選択することにより、実験サンプル中に含まれるタンパク質の推定やProteoform(修飾位置の相違)検出の精度を高めることができます。これはMiddle-downの手法と呼ばれていますが、ちなみに、サンプル処理は一般的に Bottom-up(〜20残基) < Middle-down(20残基〜) < Top-down(Intactなタンパク質) の順に難しくなると言われています。

大きなペプチドイオンはより大きな電荷を持つ傾向がありますので、従ってプロダクトイオンも多価になる可能性が高くなります。Mascotは3価以上のプロダクトイオンであっても1価または2価と仮定して検索しますので、ピークリストを作成する際はプロダクトイオンの電荷を MH+ に変換(de-charge)し、ついでに「Instrument」設定も1価のプロダクトイオンだけを検索するように定義すると検索操作と検索結果の解釈が楽になります。

使用したMiddle-downの質量データセットは、2つの細胞株(前癌細胞株および乳癌細胞株)のヒストンH4由来で、block and release法を通じて得た非同期(ほぼG1期)、 S期、G2/M期に対応しています。

2つの細胞株で229個のproteformを同定し、そのうち非同期(G1期)由来は127個、S期由来は178個、G2/M期由来は169個でした。

プレゼンテーションに使ったスライドに詳しい説明を記載しましたので ここ をクリックしてご覧ください。

Methylation on Lysine 20

今月の小技:定量関連修飾設定

Mascotの修飾にかかわる設定は、Mascotのトップページ(http://PCのホスト名/mascot/)の[Configuration Editor]リンク→[Modifications]リンクで表示される「Modifications」UIページで行いますが、定量計算に関わる次の修飾設定は[Quatitation]リンクの「Quantitation Methods」UIページで設定します。

Exclusiveな修飾:
Light(L)な修飾とHeavy(H)な修飾が独立に適用されます。結果としてL修飾ペプチドとH修飾ペプチド以外のペプチド(修飾なしペプチドまたはL修飾とH修飾の2つを持つペプチド)は存在しません。[Component]/[Modification groups]/[Mode]の値を「exclusive」に設定し、[Method]/[Constrain Search]に[✔︎](チェック)を入れると機能します。[✔︎]を外した場合は、Variableの条件で検索し、Exclusiveの条件で定量計算を実行します。「Dimethylation [MD]」の例では、ひとつのペプチド中の全てのKとN末端がDimethylで修飾されるか、ひとつのペプチド中の全てのKとN末端がDimethyl:2H(4)で修飾されるかのどちらかになります。

1つのサイトに2つの修飾:
Mascot Server 2.4以降では、ひとつのサイトに対してExclusiveな修飾とVariableな修飾を同時に適用することができます。この設定はMFGファイルの先頭行に「MULTI_SITE_MODS=1」を追加することにより有効になります。ラベルと修飾が同時に起こる場合を想定して「Label:13C(6)+Acetyl」のような設定をする必要がなくなりますので、SILACのような実験データに対して特に有用です。

安定同位体標識:
たとえばNやCがN15やC13に代謝的に標識される場合を想定した、定量計算でのみ有効な設定です。二重標識の例である「15N+13C Metabolic[MD]」の設定をご覧ください。

より詳しい説明は ブログヘルプページ をご覧ください。

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