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2016年10月号

ひとつのプリカーサイオンに対して複数のフラグメンテーション法(たとえばCIDとETD)を使って各々独立にMS/MSスキャンを行った場合は、MS/MS質量データ毎にフラグメンテーション法に対応する「Instrumet type」を指定してMascot検索を実行するとスコアが最適化され、よりよい結果が得られます。

Mascot を利用した研究論文を紹介しています。取り上げてほしい話題や研究論文かありましたらぜひご紹介ください。また、 Mascot ニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

今月の小技は、配列データベースに含まれる不明・不定なアミノ酸を示す文字の処理方法などについてご説明します。

Mascotニューズレターのバックナンバーは このページ からご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。

 

今月のトピックス

CIDとETDが混在した質量データ
Mascot を利用した論文の紹介
今月の小技
 

CIDとETDが混在した質量データからベストな検索結果を得る方法

最近の質量分析計は、ひとつのプリカーサイオンに対して、たとえばCIDとETDのモードでそれぞれ独立にMS/MSスキャンを実行し、質量データを収集することができます。フラグメンテーションの方法が異なれば、発生するイオンシリーズも異なります。

Mascotの標準入力ファイルフォーマットである「mgf」は、ひとつのMS/MSデータにひとつの「Instrument type」を指定するこができるようになっていますが、通常はCIDとETDから発生し得るイオンシリーズ全てを含む「super-set な Instrument type」を定義して、それを全てのMS/MSデータに適用していると思います。

しかしながら、「super-set な Instrument type」は、MS/MS質量データがETD由来であってもbイオンを調べますし、CID由来であってもcイオンを調べますので、検索におけるフラグメンテーションの特異性は失われ、また検索空間も大きくなります。

Mascot Distillerはピーク抽出プログラムとして高い評価をいただいておりますが、最近リリースした version 2.6 では、質量分析計のRAWデータのスキャンヘッダー情報を読み取り、使われたフラグメンテーションのタイプを含めてピークリストを作成する機能を実装しました。すなわち、MS/MS質量データ毎に独立に「Instrument type」を指定して「mgf」ファイルを作成することができます。PRIDE に登録されている質量データを使ってテストしたところでは、「super-set な Instrument type」を使ってMascot検索した場合よりも、MS/MS質量データ毎に「Instrument type」を指定した場合の方が、同定ペプチドの数は13%増加し、検索時間は20%減少しました。

詳しくは ブログ をご覧ください。

Fragment according to precursor charge

Mascotを利用した論文の紹介

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

Phosphoproteomics to Characterize Host Response During Influenza A Virus Infection of Human Macrophages

Sandra Soderholm, Denis E. Kainov, Tiina Ohman, Oxana V. Denisova, Bert Schepens, Evgeny Kulesskiy, Susumu Y. Imanishi, Garry Corthals, Petteri Hintsanen, Tero Aittokallio, Xavier Saelens, Sampsa Matikainen and Tuula A. Nyman

Molecular & Cellular Proteomics (2016), 15, 3203-3219

The influenza A virus season is approaching and many of us will unfortunately be affected. In order to better understand the rapidly mutating virus and its ability to evade our antiviral treatments, the authors have investigated the host cell factors that are exploited by influenza viruses.

Primary human macrophages were infected with influenza A virus to elucidate the intracellular signaling pathways and critical host factors activated upon infection. Using LC/MS/MS and bioinformatics, they identified 1113 human phosphoproteins that showed changes in their phosphorylation status upon IAV infection, implying that the IAV infection effects host protein phosphorylation. Additionally 285 phosphorylation sites in 222 different proteins have not previously been reported.

The infection had a major influence on the phosphorylation profiles of a large number of cyclin-dependent kinase substrates. The authors tested a number of small molecule CDK kinase inhibitors, and showed one to be a potent inhibitor of IAV-associated cellular cytotoxicity. This compound was further shown to rescue infected mice reducing mortality at 10 days from 83% to 0.

Thumbnail from featured publication

今月の小技

配列データベースの中に不明なアミノ酸を示す X(任意のアミノ酸)や 不定のアミノ酸を示す B(アスパラギン酸 D またはアスパラギン N)あるいは Z(グルタミン酸 E またはグルタミン Q)の文字が含まれている場合、Mascot はその文字が意味する全てのアミノ酸に置き換えて検索を実行します。例えば、文字 X を含む場合は全てのアミノ酸に置き換えて検索を実行し、文字 B を含む場合は D および N に置き換えて検索を実行します。ただし、この「置き換え検索」は時間を要するため、ひとつのペプチドに対してB と Z は合計3つまで、X は1つまでに制限しており、これを超える場合はアミノ酸の加重平均質量(110Da)を使って検索を実行します。

不明・不定の割合は配列データベースによって異なります。NCBInrでは、Xは4000残基に1個の割合で含まれています(ただし均一的に分散しているわけではありません)。これは恐らくコンティグをアセンブルする際に挿入される遺伝子コードNがORFに含まれてしまうことに由来するのではないかと思います。なお、孤立したXの割合は20000残基に1個程度です。

ストップコドンを示すために配列の中にアスタリスク(*)を挿入しているタンパク質データベースもありますが、Mascotは「*」を含む配列データベースには対応しておらず、セットアップの際に「illegal character」エラーを出力します。従いましてもし可能であれば、アミノ酸配列に翻訳されていない塩基配列データベースに対して直接検索する方がより現実的です。ストップコドンは適切に処理されますし、フレームシフトが発生している場合でも正しい配列を検索します。また、Error tolerant検索 においては1塩基挿入および欠損を考慮しますので、検索の可能性が広がります。

Runs of X

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